最近、放課後に田村くんと一緒に田村くんの石火矢のユリコと散歩をしたり、火縄銃の練習をしたりと火器オタクライフを満喫していた。元々火器全般が好きだから、あたし自身とても楽しんでいる。
授業が終わり教室を出ようとすると、くのたまの友人に嫌な顔をされた。
「げっ、今日もあの田村とユリコの散歩?」
「うん、まぁね。あたし火器好きだから楽しいよ」
「ねぇねぇ、もしかして田村と付き合ってるの?」
「いや、付き合ってないけど……田村くんは面白い人だよ」
あたしの答えに、友人はうわぁってドン引いた。ちょ、田村くんとあたしに失礼だよ。あたしも最初は勘違いしてたけど、田村くんは自惚れな性格と火器のことがなければ真面目ないい奴だ。
暴走した時でもあたし自身に害がなければ見ている分には楽しい。いちいちリアクションが大きいから全く飽きない。アイドルを自称しているのに、すごく顔が崩れるのとか……たまんないわ。
田村くんの顔芸は神業だと思う。
「……そのうち告白とかされちゃうんじゃない?」
話を聞いていた別の友人がニヤリと笑う。
ちょっと男子と仲良くするだけですぐ付き合ってるんじゃないかって疑ってくるのは女子の性なのだろうか。
「いや、ないない。田村くんは人間の女の子に興味ないもん」
「それもそうか。とりあえず、いってらっしゃい」
友人たちは納得したのか、田村くんの話題に飽きたのか、今度は六年生の忍たまの先輩たちについて語りだした。女子って怖い。先日久々知先輩と一緒に昼食をとっただけでも質問攻めにされたっけ。
久々知先輩はくのたまに人気があるからみんなのオーラがとても怖かった。うん。
かく言うあたしも実は久々知先輩に憧れを抱いていたりするけれど、ただでさえ火薬委員会を手伝っていて久々知先輩ファンのくのたまには「抜け駆けだ」とあまり良く思われていないので、下手なことはしないようにしている。
もちろん、憧れていることは誰にも言っていない。知られたら火薬委員会の手伝いに行けなくなるわ。
教室を出る前に恋バナに花を咲かせる友人達をもう一度見てみる。食満先輩の話でキャーキャーはしゃぐ友人。
――なんてこった、お前こないだまで鉢屋先輩鉢屋先輩言ってたじゃないか。
そんな騒がしいくノ一教室を出たところで、田村くんを見つけた。くノ一教室は男子禁制なため、ギリギリ敷地外のところに立っている。
「やっと来たか、!」
「あれ、田村くん!」
もしかして、迎えに来てくれたのかな。
「今日はお前に紹介したいお方がいてな! もうそろそろ到着するはずなのだ! 急ぐぞ!」
「えっ、紹介したい人……?」
田村くんはあたしの腕を掴み、走り出す。その表情はとても嬉しそうだった。その人は田村くんにとってすごく大好きなんだろうなって思った。いや、本当に人なのだろうかは定かではないけど。
※ ※ ※ ※ ※
忍術学園の門の前に着き、田村くんは落ち着きなくきょろきょろし始める。つられてあたしも辺りを見回すけれど誰もいない。
「どうやらまだ来ていらっしゃらないようだ……」
「そっか。どなたかはわからないけど、田村くんはその人のことが大好きなんだね」
あたしの言葉に、田村くんは一瞬目を丸くした。そして照れくさそうに鼻を掻きながら答えてくれる。
「大好きというか……心から尊敬しているんだ。私はいつかあのお方のようになりたいと思っている!」
田村くんが尊敬している人物といったら、きっと火器の扱いに長けている人なんだろうな。それはあたしも是非お会いしてみたい。
ちらりと田村くんを見ると、田村くんはにこっと笑った。
「そういえば、はなぜ火縄銃を扱うようになったんだ?」
あたしが火縄銃を扱うようになったきっかけ……? どうだったかな。確か、大好きだった叔父が幼いあたしに火縄銃を触れさせてくれたのが嬉しくて。それも立派なきっかけだよね?
「あたしは、叔父の影響かな。叔父が火縄銃の名手で、その関係で幼い頃から触れる機会が多かったし……」
「なるほどな……がどうして女なのに火縄銃が得意なのか、合点がいったよ。くノ一で火縄銃を扱うものなどほとんどいないからな」
そう言って田村くんは苦笑した。
そうだね、くノ一には少し重い武器ではあるし、あまり使っている人は見かけないかも。でも、山本シナ先生が火縄銃を使う姿はすごくカッコいいんだよね。
それを口にしようとした瞬間、後ろから気配を感じた。
「二人とも、こんなところで何をしている」
振り向けばそこには――
「叔父上!」
「照星さん!」
田村くんとあたしの声が重なった。
「「……え?」」
再び綺麗に重なる。
えっと、つまり……田村くんがあたしに紹介したかった尊敬する人って、叔父上のことだったの?
驚愕のあまり、あたしの頭はぐるぐると混乱する。待って、叔父上と田村くんは知り合いだったの?
「……今なんて」
田村くんも混乱しているのか、しきりに目を瞬かせている。
「えっと……この方はあたしの叔父の照星です。もしかして、田村くんの尊敬している人って」
「ああ、照星さんだが」
照星……うん、それは叔父上の名前だよ。混乱のあまりなかなか会話が進まない。
そんなあたし達に痺れを切らせたのか、叔父上が苦笑いを浮かべた。
「と田村三木ヱ門、久しぶりだな。田村くん、どうやらうちのが世話になっているようだ」
叔父上があたしの頭をくしゃりと撫でた。うわぁ、髪の毛が頭巾の中でぐしゃぐしゃになるよ!!
田村くんは叔父上の前で姿勢を正し、ぶんぶんと首を横に振った。
「そ、そんなとんでもないです照星さん! 私の方こそいつもユリコの散歩に付き合ってもらったりで!! それにしてもが照星さんの姪だったなんて! この田村三木ヱ門、今まで全然気付きもしませんでした!」
「いや、確かに姪だが……娘だ」
「へ?」
叔父上の言葉に、田村くんが呆ける。
そうだよね、叔父上の言葉だけじゃ意味がわからないよね。叔父上このやろう。叔父上はあたしを本当の娘だと思っている。それだけならまだいいけれど、どうも過保護なところがあるから困るのだ。
「ややこしくしないで下さい、叔父上。田村くん、あのね……あたしの両親は戦争で亡くなったの。小さかったあたしをここまで育ててくれたのが叔父上で、本当の娘じゃないんだよ。あたしを引き取ってくださったことには感謝しているのだけど、あたしにとって叔父上は叔父上なの」
「パパと呼ぶようにいつも言っているのだがこの通りでな……」
「は、はぁ……」
あの田村くんが叔父上のデレデレな姿を見てドン引きしていた。
それはそうだよね、尊敬していた人のみっともない姿を見たら誰でも引いちゃうよね。
「、いつになったらパパと呼んでくれるのだ」
「呼びませんから。ほら、叔父上……さっさと入門票にサインしてくださいね」
執筆:13年04月20日