暗い場所から、突然明るい場所に出た。 ああ、私、天国に来たのかな。 お父さんとお母さんに会えるかな。 …リオンに、会えるかな。 目を開ければ、眩しい光が差し込んでいて。 お花畑かなと思って目を開けていたらそうではなくて。 機械がたくさんある部屋だった。 天国って、機械がたくさんあるんだなと思った。 だけど、よく考えれば、体の感覚もあるし、意識もはっきりしているではないか。 ばっと飛び起きて辺りを見回す。 機械ばかりの部屋は、日が差し込んでいるのではなくて、電気が光っているだけであって。 私の隣にはリオンが寝ていた。息もちゃんとしている。 リオンの寝顔を見て、目の奥が熱くなる。 「リオン、私たち、生きてるみたい。」 気づけば、涙が出ていた。 ■夢幻泡影■ 13話 言葉にできない 「気が付いたようだね。」 ふと、誰かの声がして。 「誰?」 辺りを見回しても誰もいない。 ここにいるのは私をリオンだけだ。 しかし、突然目の前に人が姿を現した。 「えっ!?」 見たことの無い人が、私の目の前に立っている。 しかも、この人、透けてる…! 「君たちはカーレルのマスター・と、シャルティエのマスター・リオンだね。 私はリトラー。天地戦争時代、地上軍の総司令を務めていた者だよ。 カーレルとシャルティエに頼まれて君たちをここに連れてきたが…間に合ってよかった。」 リトラーさんが、優しく微笑む。 カーレルとシャルティエが…? 「あの、助けてくれてありがとうございます。でも、どうやって…?」 リトラーさんは透けてるし、どう見ても、私たち二人をあの濁流から助けるなんてできそうにない。 『一か八かで、リトラー総司令に救助を要請したんだよ。 まさか本当にラディスロウに僕たちの声が届くとは思わなかったけれど。』 照れくさそうな声でシャルティエが答える。 それに続き、カーレルも答えてくれた。 『私たちの声を聞きつけた総司令が、海竜でとリオンをここまで連れてきたのだよ。』 「そっか、あなたたちも私たちを助けてくれたのね。ありがとう。」 だけど、海竜って…なんだろう。どこかで聞いたことがあるような気がする。 どこで聞いたんだったかな…。 「海竜…ねぇ…。」 私が必死に思い出そうとしていると、シャルティエがため息をついた。 『そうだった。はあの時坊ちゃんを庇って倒れてたんだったね。 海竜って言われてもピンとこないのは当然だよね。』 シャルティエの言葉に、私ははっとした。 そういえば、神の眼を取り返しに船に乗ってバティスタに襲われたときに リオンを庇って怪我したことがあった。そのときに、リオンから聞いたことがある。 確か、私が倒れた後にその海竜が現れて、フィリアさんとクレメンテを引き合わせたって。 「そっか、あの時の…。」 しかし、海竜は2回も目の前に現れたのに2回とも気を失ってて、見たことが無い。 一応助けてくれたわけだし、後でお礼を言いたいなぁ。 …というか、海竜って、海の動物なのかな?人間なわけないないよね。 …万が一、人間で、男の子で、美少年だったらどうしよう! 今までリオン一筋だと思ってたけれど、案外ミーハーだった。 そういえば、リオンはまだ目を覚ましていない。 …外傷は特に無さそうなんだけれどな。 「彼は、君よりも怪我をしていたから回復の唱術をかけておいた。 流れていた岩にぶつけたのだろう、凄い怪我だったよ。 もう傷はないのだが、余程疲れているのだろうな。」 リトラーさんは私とリオンの顔を交互に見ると、優しく微笑んだ。 「彼は君を庇うように抱きしめていたからね。」 「……は!?」 リトラーさんの言葉に、一瞬にして頬に熱が篭るのを感じる。 リオンが私を庇って、抱きしめてた…? …バカだよリオンは。 私たちは死ぬってわかってたのに、それでも私を守ろうとしてくれてたなんて。 リオンの寝顔を見つめ、「ばーか」と呟く。 それでも、私は嬉しかった。 リトラーさんに、ここ、ラディスロウの休息室を貸してもらって、今はゆっくりしている。 リオンは相変わらず眠り続けている。 私はリオンが眠っているベッドに腰掛け、改めて近くで見てみて、綺麗な顔だなぁって思う。 睫毛、長いなぁ。髪の毛もさらさら。 ……女の私よりも可愛いじゃないか。ちょっと…いや、かなり嫉妬してしまう。 ああ、リオンより綺麗な顔に生まれたかった。ちょっと引け目を感じる。 マリアンさんみたく、綺麗だったらよかったな。 でも、リオンは私を好きって言ってくれた。私たち、両思いなんだよね。 そう思ったら自然とニヤけてしまう。 「……へへへへ。」 『、気持ち悪い…。』 「う、うるさいなぁシャルは!」 「…確かに、今のは気持ち悪いな。」 私がシャルに向かって吠えていると、私の下からクスクスと笑い声が聞こえた。 そこに視線を向けると、さっきまで眠っていたはずのリオンが ぱっちりと目を開けて、私を見つめていた。 「うはぁ!?」 驚いた私はベッドからずり落ちて尻餅をついた。 リオンはむっくりと体を起こし、呆れたように私を見下ろした。 「何だ、僕の寝込みを襲うんじゃなかったのか?意気地なしめ。」 「ちょ、な、何言ってんの!?そんなわけないでしょ!!」 少し残念そうな顔をして、前髪を掻き分けるリオンはとても色っぽい。 …こいつ、襲って欲しかったのか…? 「僕たち、生きているんだな。ここは…ラディスロウか。」 辺りを見回し、眉間に皺を寄せるリオン。 私は頷き、補足説明をした。 「うん。リトラーさんって人が助けてくれたの。天地戦争時代の地上軍の総司令だって。 あの、リトラーさんはこのラディスロウのコアレンズで生きてて……何て言えばいいんだこれ。」 リオンのこと、意識しすぎちゃっていつものように上手く言葉が出てこない。 どうしよう、庇ってくれてたお礼も言わなきゃいけないのにな…。 「ご、ごめん。私、頭が混乱してて上手く説明できない…。」 嘘。 本当は、リオンの顔を見るだけでドキドキしちゃって、上手く話せないだけだ。 穴があったら入りたい。今すぐにここから逃げ出したい。 「そうか。」 リオンはそう一言言って、ベッドから降りた。 床に座り込んでいる私の前にしゃがんで、私の頭を優しく撫でる。 恥ずかしさのあまり、私は俯いて、なるべくリオンの顔を見ないように努めた。 「…あんまり、意識しないでくれ。せっかく互いに好き合っているってわかったんだ。」 「へぇ、何、わかってたの。」 リオンには私の本音がしっかりバレていた。 …悔しい。私ばっかり意識してて、リオンはそうでもないみたいで。 これじゃ、私ばっかり空回りしてるみたい。 「リオンは私のこと意識してないの…?」 「していないわけないだろう。 こうして、に触れているだけで胸が張り裂けそうなんだ。 でも…だからといってを離したくない。の側にいたいと思う。」 「…そ、そう。」 好き合ってるって分かった途端メロキュンな台詞を言ってくれるじゃないか。 今まで、こんなこと言われたことなかったから、すごく嬉しい。 私、今、すっごく顔が赤いと思う。 真っ赤な顔、リオンに見られてると思うと、とても恥ずかしい。 そんなことを思いながら、勇気を出してリオンの顔を見る。 すると、リオンも真っ赤な顔をしていた。 リオンも、私と同じなんだなって思った。 そしたら、なんだか可笑しくて、すごく笑えた。 執筆:06年2月16日 前話 / 次話 |