本日も嵐なり



「ねぇ、。」

「…………」

今日もまたいつもの繰り返し。

「愛と恋の違い、わかるかい?」

「さぁね?」

いい加減嫌になる。

「可愛いなぁ、は。僕は君にメロメロさっ!」

「ああ、もう…ウルサイ。死んでください」

何が嫌になるって…それは目の前のこの男。
この変態男、四星のサレと申しまして。

「うーん、トゲのある敬語…そそるねぇ」

「…うるさいです!テメーなんかお呼びじゃねぇんだよ!お帰りあそばせ!!」

そして私はこの変態男の副官を務めております、名はと申します。
趣味ですか?それは決まってるじゃないですか。
サレの抹殺計画を練ることとサレの苦痛そうな表情を見ること。
それ以外にはない。

しかし、サレは四星と呼ばれるだけあってなかなかの強者。
私なんかがサレの抹殺なんてできるわけないんだけど。


でもいつか…必ず…!










も毎日大変だな」

書類をまとめている最中、ミリッツァが私の隣で同情してため息を吐く。
あの変態サレのことを言っているのだろう。確実に。

「うん、もう最近ではヤツの顔を見るだけで自殺したくなるくらいなの。
ていうかヤツを殺してしまいたいな。でもあんな変態殺しただけで私がブタ箱に入るのは嫌ね」

どうしたらいいかとミリッツァに問掛けてみるけど、ミリッツァは眉間に皺を寄せて唸るだけだった。

ああ、もうホントこの仕事が辞めたくて仕方が無い。
変態ヤローの副官だなんて。どうして私は副官になったんだ。

思い返せば私が副官になったとき、サレはまだまともだった。
いや、人の不幸を悦んでる変な奴だったけど、少なくとも今よりはまともだった。
だけどある日突然今のようになってしまった。
本人曰く、私に恋してると気付いた日から、だそうだけど…そんなこと知るか。

「やぁ、僕の愛しい!迎えに来たよ!」

「ちょ…!」

突然、部屋の扉が勢いよく開かれ、サレが私に飛びついた。
後ろから飛びつかれた私は驚愕と恐怖で悲鳴を上げる。

しかしサレは構わず私に頬擦りをし始める。

の体、柔らかい…ハァハァ」

「あっ!…って変なとこ触らないで下さいよバカーーーッッ!!!」

なかなか離さないサレに回し蹴りを決め、倒れたサレを踏みつける。
はぁ…はぁ…もう本当に嫌だ。

「ハァハァ…の美しい足に踏まれる僕って幸せ…っ!」

思わず鳥肌が立った。

「それはそうと…サレ、今回の任務は?」

私の下で悦っているサレを見下ろし、ミリッツァが淡々と問いかける。
するとサレは真面目な顔をして、私を見上げた。

「な、何ですか?」

急に真面目な顔をされて驚いた私は反射的にサレから足を離した。
するとサレは立ち上がりながら答える。

「今日の任務はラジルダから女の子集めさ。ミリッツァ、今日は君も一緒さ。くれぐれも僕との邪魔は…」

「よかった、ミリッツァと一緒なら心強いよ。よろしくね、ミリッツァ」

させるかよ。
と思いつつ私はサレがセリフを言い切る前に妨害してミリッツァの手を取って喜んだ。
サレと二人だけの任務なんて嫌に決まってるじゃない。
サレは呆然とし、ミリッツァは呆れるように目を伏せた。








任務は難なく成功。
帰りの船に乗っている途中、私はサレからおぞましい量の書類と資料を渡された。

「何ですか、これ」

へ僕からのラブレター」

「捨ててよろしいですか?」

「冗談だって。一応大切な資料だから全部目を通しておいてよ。
読み終わったら僕に返して。僕のほうで処理しとくからさ」

「いつまでに読めばいいんですか?」

「明日の朝までに。ついでに僕のポエムも混ざってるからちゃーんと全部読んでね?
ああ、心配しなくても大丈夫。テーマは『僕の』だから。」

「はーい、一枚も読まず、そして残さず全て焼き尽くしてさしあげるので安心して下さい」

満面の笑みで答えると、サレは「恥ずかしがり屋だねぇ」と顔を赤らめた。
それに対し、私は笑顔のままサレにタックルをかまし、海に突き落とした。







船に乗ってる時。降りた後歩きながら。
バルカ港を歩きながら。城の中を歩きながら。
そして自室で座りながら、資料と書類に目を通した。
全部読み終えた頃にはもう月が空の真上に浮かんでいた。

「さって、サレに返しに良くか」

私は資料と書類を持ち上げ、仕方なくサレの部屋に向かう。
足取りが重い…。気が進まない。

サレの部屋の前に着くと、私はハァ、とため息を吐いた。
これから起こるだろうサレの行動を考えると頭が痛くなる。
しかし、この資料と書類を渡さないと仕事にならない。
私が意を決し、取っ手に手を掛けたその時…

「んっ…」

部屋の中から女の人の声が聞こえた。

「はぁっ…!」

…え?
あの、これって…もしかして。

私はしばらくその場で固まってしまった。
…情事、ですか?コレ。

そっか。そうだよね。
私なんてサレのおもちゃの一つに過ぎないわけだ。
今まで私を追い回してたのきっと私の反応を楽しんでただけであって
本当に私のことを好きってことじゃないんだよ。
サレはそういうヤツだもんね。

もはや、相手は誰か、なんて気にならなかった。

私は音をたてないように足元にそっと資料と書類を置き、その場を立ち去った。
…どうも気分が悪い。なんていうか胸糞悪い。
どうして、こんなにモヤモヤするんだろう。







翌日、私は何事もなかったかのように黙々と仕事をしていた。
今日でこの仕事とおさらばしてやるのだ。
先程ミルハウスト様にきちんと辞職願いも出してきた。
だから、これがは後の仕事。
書類の整理、書類の整理、書類の整理…。
って今任務はないから書類の整理しかないけど。

そうしているうちに、ミリッツァが部屋に入ってきた。

、サレが呼んでいるぞ」

「サレ?誰それ?」

私は笑顔で問いかける。
するとミリッツァは苦笑いを浮かべ、頭を掻いた。

「…気持ちもわからないでもないけど。とにかく急用らしぞ」

急用、と聞いて私はため息を吐く。
できれば、もうサレには会わないまま仕事を辞めたかったのに。

「わかった。ありがとう、ミリッツァ」

「……あぁ」

ミリッツァはこくりと頷いた。







サレの部屋に向かうと、サレは自室の前で眉間に皺を寄せながら壁に凭れ掛かっていた。
そして私の姿を見るなり、つかつかとこちらに向かって歩いてくる。
いつになく、真面目な表情なサレに私は恐怖感を抱く。

「サレ…?」

私が口を開いた次の瞬間、私は壁に押し付けられて、両手を拘束された。

「ちょ、何すん…」

睨みつけるように私を凝視するサレ。
私はいつものようにキレようとしかけたが、思わず怯んでしまった。

怖い。

いつものサレじゃない。
こんなの、初めて…。

「辞めるって本当なのかい?」

「や…辞めます。もう貴方の遊びに付き合いたくないです」

「…遊び?」

「だって!好きでもないくせして私にベタベタしてきて!!
いつもいつも迷惑だったんだよ!これからは他の女の人と遊んでなよ!
私の代わりならたくさんいるでしょ?代わりの玩具ならいっぱいあるんでしょ!?」

…」

「触らないで!離して!もうたくさんなの!!」

私はサレの手を払い、その場から逃げようとする。
しかし、サレは無理矢理私を引っ張り、私の唇を奪った。

「んっ…!?」

逃げようとしても、頭を固定されて逃げられない。
やがて私は抵抗できなくなり、サレに身を委ねてしまっていた。

「…

首筋に舌を這わせられて、私はギュッと目をきつく瞑る。

どうして…。

どうしてなの?

「…や…めて…。お願い…っ」

「僕は本当にが好きなんだ。が欲しいんだ。それなのに、僕の前から消えるなんて、冗談じゃない…!」

サレの真面目な告白に私は顔を赤くした。
しかし、一つ疑問が浮かび上がる。

「じゃあ…昨日の夜…何で…?」

「夜?…ああ。自慰のコトかな?もしかして見てたのかい?」

自慰…って…。
だけど、確かに聞こえた、あの女の人の喘ぎ声は…?

「えっ、でも女の人の声が…」

「女?…あー。僕ってヤってるときって声高くなるから。特にを想いながらヤると興奮が収まらなくて」

サレの言葉に、一瞬耳を疑う。

「………は?」

「何なら今証明してみせようか?二人でヤることになるけどいいかな?」

「遠慮しときます!」

危機感を感じ、私は身を守りながら首を横に振った。
それにしても、サレが自慰してただけだったなんて…。
私はてっきり…

「僕が以外の女とヤってたと思ったから嫉妬して辞めようとしたんじゃないの?」

「…!!?」

図星を突かれ、思わず絶句してしまう。
そんな私の様子を見たサレはニヤリと笑って私を抱き上げた。

「うっわ!!サレ!?」

「ミルハウストにはちゃんと僕から言っておくよ。
その代わり、今日からは僕のもの。そして僕ものものだから。いいね?」

嬉しそうなサレを見て、私はふと笑みがこぼれた。
どうやら私はいつのまにかサレに恋をしていたらしい。
あんなに嫌っていたのにな。

「サレ」

「何だい?」

「あのね――――――」











私も貴方のことが好きだよ




執筆:05年7月18日
修正:08年3月25日