――田村くんがあたしを好き。叔父上のことが好きであたしを利用してたんじゃなくて、あたしを好き。
 なぁんてこったああああああああああああ!!
 この色気皆無だった人生の中で告白されたことなんてないから、どうしたらいいかわからない! 色恋沙汰に興味なんてなかったから本当にわからない! 今までは田村くんから逃げたりあしらったりすればいいだけだった。それは田村くんに気持ちがないからだと思っていたからだ。
 しかし、もうあたしは逃げるわけには……いかねぇッ! 今後どのようにして彼に向き合っていくべきなのか!

「かくかくしかじかでそういうことなんだよ!」

「……なんとなく把握した。だから言ったじゃない、田村は絶対あんたのこと好きだって」

「いつそんなこと言ったっけ、ごめん覚えてないわぁ。起きたまま夢でも見てたんじゃない?」

「ちょっとあんたいっぺん死んできたらいいんじゃないの?」

 いやね、くのたまも上級生になるとこんなに口が悪くなってしまうのね、くわばらくわばら。
 同室の友人に恋の相談をするも、あたしの悩みは解決することなくただ根掘り葉掘り聞かれて終了した。恋の先輩だと思って相談したのに解決しないとかこれ如何に。

「はぁ、あたしはどうしたらいいのでしょうか、神様」

「ねぇ、いつまでも薄着でいると風邪ひくよ? それと寒いから窓閉めて」

 肌寒い夜、月を見ながらあたしはぼんやりと田村くんのことを考えた。一応告白されたわけだし……返事? いや、返事なんてとっくにしたよな。断ったよな。
 でも田村くんは諦めないんだよね。
 あたしも……積極的にアプローチしてくれる彼に対して真摯に受け止めるべきなのかな。とにかく、逃げない。うん、これだろうな。うわ、なんだろ! 田村くんのことを考えていたせいか頬が火照ってきた! ああー! もっと考える猶予をください! 明日は田村くんに会いませんよーに!



※ ※ ※ ※ ※



 朝起きて食堂へ行くと、今一番会いたくない人物ナンバーワン田村三木ヱ門に出くわした。あたしはこの瞬間神様なんていないのだと確信した。
 逃げないと昨夜決めたばかりだったけどあたしの身体は正直で、もう逃げ腰だ。

、おはよう! 朝から会えるなんて、今日はついてるなぁ!」

「……た、田村くん……!」

 こいつはあたしのことが好きなんだとわかった瞬間意識してしまって上手く話せなくなるとか、今まで気付かなかったけど、あたしは意外と乙女だったみたい。
 田村くんから目を背けて挨拶する。

「おおおお、お、おお、おはよぉっ!!」

 ありえねぇ、声が裏返りやがるなんて。田村くんだけでなく、周りにいた忍たまやくのたまたちもあたしを凝視している。うわぁ、この空気マジ耐えられない。お呼び出し申し上げます。四年い組の綾部喜八郎くん! 四年い組の綾部喜八郎くん! 至急食堂まで来て穴を掘ってあたしを埋めて下さい!!

、顔が赤いようだが……熱でもあるんじゃないのか?」

 田村くんの整った顔が至近距離まできて、あたしの額と田村くんの額がコツンと触れた。

「――――っ!?」

「あ、熱っ!? 大変だ今すぐ保健室に行こう!」

 そして田村くんに横抱きにされる。逃げようとしたのに、身体がいうこときかなかったんだけど、どういうことなの。ねぇ、どうしてあたしは今、田村くんにお姫様抱っこされてるの?
 そのうちあたしは考えるのをやめた。
 ――いや、やめたらダメだろ!
 ……って、一人心の中でノリツッコミしているバヤイではない!

「だ、大丈夫だよ田村くん!! あたし、超元気!! だから降ろして降ろせよ降ろして下さい!!」

「でも、ぼーっとしてるし、熱もあるじゃないか! 新野先生に診てもらおう!」

「平気だと言ってる!!」

 実力行使。
 あたしは田村くんの顔面に己の拳を力一杯叩き込んだ。その場に倒れる田村くんから離れ、華麗に着々すると、周りから「おおー」と感嘆の声が漏れる。ふっ、決まったぜ。
 しかし、直後にフラつくあたしの身体。

「あ、あれ?」

 何故か立っていられなくなり、あたしはその場に膝をついた。なんか、フラフラするし、視界が霞む。
 なん……だと……!? 組織の連中、あたしの身体に何をしやがった!
 再びあたしの身体が揺れて、浮遊感……ああ、なんかもうダメだ。

「おっと!」

 倒れる直前にどこからか保健委員長の善法寺伊作先輩がやってきて、あたしの身体を支えてくれた。伊作先輩すごい……あなたがあたしの王子様か。いや、不運な王子様とか、ちょっとお断りかな。

ちゃん、風邪をひいているじゃないか!」

「……え?」

 風邪? 誰が? あたしが?

「はい、口を開けて! ……うん、喉も腫れてる。今日は一日休んでね」

 伊作先輩が苦笑いを浮かべた。
 そっかぁ、あたし風邪ひいたんだ。

「乱太郎と数馬、君たちは三木ヱ門を保健室に運んで! 彼の方が重傷だ! 急いで! 僕はちゃんを連れて行くよ」

「はい! 伊作先輩!」

「うわぁ、これは酷い……」

 保健委員の乱太郎くんと三反田くんが気を失っている田村くんを見て顔を真っ青にした。
 え、何だって。あたしより重症って(笑)
 ……すいません、あたしのせいですよね。後で田村くんに謝らなきゃな。

ちゃん、いくら三木ヱ門がウザくてぶっ殺したいと思ってもあそこまでボコボコにしたらダメだよ?」

「いえ、あたしそこまで思ってませんよ伊作先輩」

「あ、あれ?そうだった?」

 伊作先輩はあははと笑いながらさり気無くあたしを横抱きにした。なんと、本日二度目のお姫様抱っこである。うおおおおおなんじゃこりゃあああああ! 今日のあたしはお姫様なのか!? そうなのか!? というか、くのたまたちの視線が刺さるように痛い。これは伊作先輩ファンたちの嫉妬の熱視線! あわわわわ!

「あ、あの、伊作先輩!? あたし歩けます…!」

「ダメだよ、フラフラしてるんだから! ちゃんは自分の体調のことわかってないんだから、大人しくしてなさい!」

「あ……はい。すいませんでした」

 伊作先輩に叱られたあたしは黙って保健室に連行された。伊作先輩はお腹の中に何か黒いものを飼っていると思った。
 そして一日中寝ていたらなんだか頭がすっきりして、田村くんとは別に今までどおりでいいじゃんという結論にたどり着いたのだった。



執筆:13年04月26日